ヴィーガンという新たなフィールドへ:暮らしの発酵ライフスタイルリゾート
眠ること、食べること、空間を整えること。あらゆるシーンで発酵を取り入れ、自然を感じる癒し空間を実現させている「EMウェルネス暮らしの発酵ライフスタイルリゾート」。ホテルの心地よさを日々の暮らしに活かせるヒントをご紹介。
国内初のヴィーガン認証ホテル
暮らしの発酵ライフスタイルリゾートは、NPO法人日本ヴィーガン協会が定めるヴィーガンレストラン認証をホテルとして国内で初めて取得。肉、魚、乳製品、卵、はちみつなどの動物性食材を使用しない完全菜食メニューがレストラン・カフェに並ぶ。照屋寛幸総料理長は、ヴィーガン認証取得にあたり、職員に〈ヴィーガン〉を周知させることと、これまで使えた材料が使えないことが大変だったと語る。
EMウェルネス 暮らしの発酵ライフスタイルリゾート 総料理長 照屋 寛幸さん
「私は和食と琉球料理が料理人としての基礎なので、和食のベースとなるかつおと昆布の合わせ出汁が使えないことに苦労しました。干しシイタケや干し大根からとる出汁はクセが強いので試行錯誤でしたね。認証取得とお客様の健康のため、甘みは白砂糖からきび糖や甘酒に切り替えています。精製塩はすでに使っていませんし、その他の調味料も伝統製法で造られた醤油やみりんなどに徐々に変えていく予定です。おいしさはもちろんですが、見た目の美しさとコストバランスなど様々な課題を少しずつ解決していきます。」
ヴィーガンメニューを提供しているレストランに配布される認証マーク。300店舗以上のヴィーガンレストランに採用されている。
食材と会話して作るスイーツ
白砂糖の製造段階で動物の骨の灰が使用されている点から、ヴィーガンの方は白砂糖を避ける。彩り豊かな洋食スイーツにとって、白砂糖は欠かせない材料。パティシエの上門梨乃さんは牛乳、卵、バター不使用のヴィーガンスイーツに初挑戦だった。
パティシエ 上門 梨乃さん
「調理学校では、砂糖は何度で焦げるとかメレンゲはどうやったら膨らむのかといった調理科学を学びます。お菓子作りはそれらの方程式を考えて、自分が出したい味や食感に仕上げていきます。ヴィーガンスイーツは、白砂糖の代わりに甘酒やみりんなどを使いますが、それらの方程式はどこにもありません。『何度で何をしたらどうなるか』といったところを作りながら調べています。ただ、白砂糖ではないからこそ出せる味わいや食感があるのでとても面白いです。」
卵や生クリームなどを使っていなくても、「キレイでおいしい!」というファンが急増中のヴィーガンスイーツ。
「ヴィーガンスイーツに挑戦してみて、ヴィーガンの方々は料理上手でおいしいものを知っていると思いました。自分たちの発想にはない食材の組み合わせや調理法で料理を楽しんでいます。スイーツは、バターと砂糖があれば、なんでもおいしくなるんですよ(笑)。それを使わないようにするには、材料と相談しないといけないし、食材に合った提供方法を考えないといけません。例えば、バターは冷めると固まりますが、植物性のオイルは固まらない。ゼラチンも使えないとなると、カップに入れて提供するという方法にせざるを得ません。」
一から丁寧に作られるスイーツを目当てにランチビュッフェに来る方も多い。
「おいしい」の先にある食の多様性
「元々このホテルは、料理を一から手作りしています。自分たちで生クリームを泡立てるし、自社農場から産みたて卵が届いて卵の殻を割って使っていると言うと、よそで働いているパティシエ仲間は驚きますね。ビュッフェスタイルで食事を提供しているこの規模のホテルのレストランであれば、大抵、業務用に加工されたものを何かしら使っているはずですから。食材も、できる限りオーガニックや沖縄県産を使用していてとても贅沢です。
ヴィーガンスイーツだけではなく、グルテンフリー(小麦粉を使用しない)スイーツのバリエーションも増えてきました。色んな食の好みや考え方の方がいらっしゃいますが、たくさんの方に『おいしい』と言っていただけるのがとても嬉しいです。スイーツを担当している仲間たちとはとてもいいチームワーク で、もっとヴィーガンや発酵で特長を出していきたいねと日々研究しています。」
ホテルのレストランでは、料理ごとにヴィーガン、グルテンフリー、アレルギーなどの表示がされ、好みに応じて料理を選びやすくなっている。今後は、予約制でヴィーガンビュッフェなどもスタートするそうで、暮らしの発酵ライフスタイルリゾートで得られる食の楽しみ方はますます増えていく。
動物性食材を使用せず、沖縄県産食材を豊富に使用した、レストラン人気の<ぬちぐすい(命の薬)>
「暮らしの発酵通信」14号掲載