「今この瞬間」を大切に:大衆まめ皿酒場「いまや」
神奈川県大船駅。鎌倉市と横浜市の境に位置し、JR各線と湘南モノレールの列車が行き交う鎌倉の玄関口。生鮮食品が安いと有名で、地元のみならず、遠方からも買い物に来る人でにぎわい、“商店街”が生きている町だ。 そんな大船仲通り商店街の南端に位置する、大衆まめ皿酒場「いまや」。野崎均さんと彩代さんの若いご夫婦が二人三脚、旬と手作りにこだわる食を提供している。 (「暮らしの発酵通信」も置いてくださっています。)
「今この瞬間」の「いまや」
均さん:お食事を提供するのって、一期一会。一食一会ですよね。今この瞬間を大切にしたいし、お客様にも楽しんでいただきたくて、自分が店をやるなら「今」という言葉を絶対入れたいと思っていました。「いまや」という響きは、懐かしさもあり、老舗っぽさも感じています。 「にっぽんの力強い食文化」というコンセプトはあるんですが、あまり肩肘張らずに提供したいから、気軽に親しんでもらえるために豆皿で提供しています。豆皿も、サーフボードの形やタコツボ型だったり、鶴型だったり、皿の形を見るだけでも楽しいものが多いです。
その中に、旬の食材やお惣菜を盛っています。手作りにこだわって、調味料も自然のものを使ったり作ったりしています。
食が人をつくる
彩代さん:塩麹や醤油麹、発酵仲間から教えてもらった乳酸菌飲料のミキも作っています。ミキはご飯とサツマイモからつくるんですが、それにアルコールを加えて、ミキサワーとして提供しています。乳酸菌が入っているので、カルピスのような味になりますよ。 あとは、手作りの漬物。お世話になっているお米屋さんからお米とぬかをもらって、ぬか床を育てています。ぬかは、煎りぬかにしてふりかけにしてもおいしいんですよ。玄米を食べる方も増えて来たけれど、精米してぬかを使う方も増えてきているようですね。お米の栄養はぬかの部分にありますから、捨てちゃうなんてもったいない!
均さん:お米は山形県の飯豊町から取り寄せています。「飯が豊か」と書いて「いいで」町。すごい名前ですよね。名前が町を表している。そのお米を羽釜で炊いてお出ししています。
「食が人をつくる」というのも一つのテーマにあるので、やっぱり、手作りにはこだわりたい。おからから味噌をつくったり柿酢を仕込んだりもしています。店で育てた醤油をお客さん自身に搾ってもらって、搾りたて生!(笑)で食べるお刺身はとても人気です。
日本の暮らし、「いま」の暮らし
均さん:日本の食文化の中に発酵というものがあるので、発酵食品のワークショップもしています。でも、食だけではなく、日本の暮らしのルーツ、日本の源に焦点を当てて深堀していきたいと思っていて、最近では、「水引」の作家さんとコラボして「なます」をつくったり、「結び」のワークショップをしてもらったりしました。
こうした昔ながらの知恵や暮らし方も少しずつ伝える中で、やっぱり、「いま」僕たちがどういう暮らし方をするのか、という事が大事だと思っています。大船で飲食業を営む僕たちが、未来を見据えた動きをしないと、地域の子どもたちに楽しい社会を見せられない。 だから、少しずつ店の洗剤も自然のものにシフトしたり、生ごみを肥料化してみたり、地域のゴミ拾い活動に参加したり…自分たちがこの地域で生きていくため、おいしくて楽しい未来をつくるためにも、「いま」を大事に動いていきます。