米国職人の技が光るクラフトビール:ベアードブルワリー修善寺
静岡県伊豆半島北部にある修善寺は、言わずと知れた温泉地。天城山を水源とする狩野川が流れる森の中に「ベアード・ブルワリーガーデン修善寺」がある。 1997年ビール醸造を学ぶため、アメリカ人のブライアン・ベアードさんと妻のさゆりさんは、東京での仕事を辞め、渡米。2000年に日本で日本一小さな醸造所を沼津市にオープンする。東京や横浜などにぞくぞくとタップルームを出店させていく中、2014年にここ、ベアード・ブルワリーガーデン修善寺が誕生。
さゆりさんの出身が静岡県だからこの地を選んだのかと思いきや、彼女は奄美大島出身。二人とも地縁のない伊豆半島でのビール造りを始めたのは、「自然」「水」「都内への物流網」だった。
「日本のクラフトビールに足りないところは、“ビールへの愛”だ」と話す、オーナー兼ブリュワーのブライアンさん。
「日本のクラフトビール市場はまだまだ。法律の壁もあるけれど、一番は、日本の人たちにとって、ビールは“とりあえず一杯”飲むもの。味わうモノではなく、夏の乾いたノドを通り抜ける爽快感を求める人が多いでしょう?メーカーによる味の違いもそれほどない。 でも、ビールは、世界一バリエーションの豊富なアルコール飲料です。色、香り、味・・・原材料と製造方法により、数えきれないほどのビールを作り出すことができます。原材料のバランスと素材のもつ複雑さから、オリジナリティが生まれるんです。 ワインで“テロワール(土地の自然条件や作り手による味の違いを楽しむ)”があるように、ビールはもっともっと味わって楽しめるものです。」
ブライアンさんたちが最初に沼津でビール造りを始めた時は、日本の大手ビールと色が違っていたり、炭酸が弱かったり、味が濃かったりして、なかなか地元の方々には受け入れてもらえなかったのだとか。 しかし、「日本人の舌はとても繊細で、ビールのテロワールを楽しめる素地が日本人には必ずある」と言い切るブライアンさん。工場見学ができるブルワリーガーデン修善寺では、常時数十種類のビールが飲める。 量よりも色んな味を見てみたい!という方は、飲み比べセットも。
晴れた日はバルコニーで自然を見ながらビールをたしなむことも。ここではメインの食事となるものはなく、ビールを楽しむためのおつまみが用意されている。
伊豆市のジビエ・伊豆鹿ジャーキーや修善寺産黒米のおかき。
ブライアンさんとお話すると、ビールへのアツい情熱と深い愛を感じる。生粋の技術者肌。工場見学で見せていただいた資料室もきっちりとラベルが貼られ、整理整頓されていた。これまでのビール研究の大事な資料だ。 長年の試行錯誤から生まれた個性あふれるビールの数々。そして、ブライアンさんのビール造りは常に進化し続け、新しいビールが生まれている。 季節限定ビールもあり、何度行っても違った楽しみができる「ベアード・ブルワリーガーデン修善寺」。キャンプ場もオープンしたので、友人・家族と自然の中でクラフトビールを味わってみては?
取材:2018年8月