1300年の歴史。神の坐す布〈鹿角茜染め〉体験!

何年たっても色褪せることなく、むしろ深みが増していく・・・さも不思議な染物が秋田県鹿角市(かづのし)にあります。「暮らしの発酵通信」21号でクリーニングえどやの田中さんを取材させていただいた際に、鹿角市の伝統染を守り伝えている鹿角紫根染・茜染研究会の關会長にもお話を伺い(取材記事はこちら)、茜染を体験させていただきました!

根を使って染める〈茜染〉

「これが茜よ。この植物の根が染めの原料になるの。」と關さん。そもそも茜が草であり、その根を使って染める、ということすら知らなかったライターかこ。紫根は名前に「根」があるので「何らかの植物の根だろうな」と思っていたので、その時点でまず驚き!

小さなハート形の葉が特徴的な茜。染には根を使う。

「日本茜は、本州、四国、九州などの山野に自生するアカネ科の蔓性多年草。輪生する葉はハート型で愛らしく、茎は四角形で小さな棘があり、周囲に絡みつきながら成長します。黄赤色の太い根は、古くから赤(茜色)の染料として利用されてきました。止血剤としても有名です。
 この日本茜の他にも、セイヨウアカネ Rubia tinctorum、インドアカネ Rubia cordifolia L.という大きく分けて3種類の茜があります。セイヨウアカネとインドアカネは染料植物として栽培されており、染料店に行けば普通に手に入れられます。しかしなかなか流通していない「日本茜」は、手に入れるのが困難といわれています。
 入手困難な「日本茜」でも、獣害が少ないというメリットもあるので、現在では「放棄農地で育ててみよう」という動きも見られます。」日本茜伝承プロジェクトより抜粋)

根からは赤い色素が抽出される。

 

1300年の歴史。鹿角紫根染・茜染

「秋田県の県北部に位置する鹿角地方には、その昔、自生のムラサキやアカネが豊富だったことから、1300年前の奈良時代からその根を使って染める紫根染・茜染の技法が伝承されてきたと言われています。
 江戸時代には、盛岡藩の手厚い保護を受けて産業として発展し、鹿角特産の紫根染・茜染は全国に名を知られるまでになり、朝廷や将軍家へ献上品として江戸へ送られていました。」
鹿角紫根染・茜染研究会より)

 

鹿角紫根染・茜染の貴重な作品を關さんに見せていただきました。国宝級の美しさ!!布を見て涙がこぼれてきたのは初めてです。

 

「絞り」に挑戦!

「絞り」は初体験の取材班。誰でも簡単に絞りができるよう、鹿角紫根染・茜染研究会ではオリジナルの型紙を開発されています。

布は国産シルクのスカーフ。少し黄色みがかっているのは、茜染ができるように下処理が施されているから。色を付ける作業は難しくないですが、色をきちんと付けるための下染は通常120~130回も繰り返され、下染だけで1~2年かかることがあります!

縛ったところが白くなる。

 

水で濡らし、「染めて→水洗い」を何度も繰り返していきます。

染料に浸している間に、關さんから鹿角紫根染・茜染の歴史などをお話いただきました。

何度も染を繰り返していくと、赤かった染料液の色が淡くなっていきます。

糸とゴムをはずし・・・

キレイに柄がでてきました!

鹿角紫根染・茜染の伝統的な文様は3つ「桝絞(おおますしぼり)・小桝絞(こますしぼり)・立枠絞(たてわくしぼり)」。今回私たちが挑戦したのは、「小桝絞」です。

ピン!と貼って乾かし、1ヶ月は陽の当らない所で熟成させてから使います。

ハッキリとやさしく、品のある茜色。宝物が増えました。

 

Information
鹿角紫根染・茜染研究会
住所
秋田県鹿角市花輪字沢小路11
TEL
080-3190-3988(会長 關幸子)

この記事を書いた人

里菌 かこ
「暮らしの発酵通信」ライター/発酵ライフアドバイザーPRO.

EM生活㈱に10年勤め、農業・健康・環境などあらゆる分野での微生物の可能性について全国各地を取材し、EM業界紙に掲載。発酵ライフアドバイザーPRO.の資格を取得し、発酵食品についても広く理解を深める。ライティングだけではなく、ワークショップ講師やイベント企画も務める。

掲載号
この記事は "暮らしの発酵通信" Vol.21 に掲載されています。
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