愛の交差点 HOLISTIC LABO・KUNIGAMI

photo by ATSUSHI SUGIMOTO

沖縄県北部の国頭村(くにがみそん)にある 〈HOLISTIC LABO・KUNIGAMI(ホリスティックラボ国頭)〉は、愛に満ちた循環の場。オーナーの鎌田晋作さんと成来さんご夫婦は、「自分の在り方が愛と幸せの循環を生み出す」ということをリトリートや自然体験を通して伝えている。

鎌田晋作さん
1980年東京都生まれ。20代でヨガに出会い「生き方」や「能力開発」の探求をしながら、広告代理店として起業し成功を収める。3.11を機に沖縄に移住。2020年に人間の本質を追究すべく、焚火生活をスタート。現在はセッション、コーチングを通して人と自然が調和し循環できる場作りと人材開発を行っている。
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鎌田成来(せいら)さん
沖縄県生まれ。断食をきっかけに口にするものの大切さと生き方を見つめ直す。2017年にRaw Bahalu Chocolateを立ち上げ、こだわりのローチョコレートの製造・販売を開始。2023年に夫婦でHOLISTIC LABO KUNIGAMIをオープン。
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みんなに愛を届けたい!

晋作さん(以下、晋)「近くのやんばるの森に土地を買ったんですが、大自然に身を置く体験を通して、自分自身と向き合って心と体の変化を感じてもらうようなリトリートを主催しています。リトリートのテーマの中に〈パートナーシップ〉を打ち出していますが、僕たちが言う〈パートナーシ ップ〉は対人関係だけではなく社会、地球など『自分とあらゆるものとの関わり方』を意味しています。自分の在り方が相手に反映されるし、それが社会にも地球にも反映されるということです。
リ トリートとは別に、僕はヨガやコ ーチング、マインドのセッションをここのラボやオンラインで開催しているので、必要であればその要素をリトリートにも投入します。とはいえ僕があえて何もしなくても、リトリートに参加した方はたいてい自然の中に身を投じると自分で色々なことを感じ取ってくれます。」

リトリートではやんばるの森の散歩も。大地の息吹を感じられる。

成来さん(以下、成)「私の自分と人との関わり方が変わった原点は、弟が水難事故で亡くなったことかな。その数年後に晋作さんとお付き合いが始まり、晋作さんからヨガや食事について教えてもらう過程で食のことや体のこと、自分と自然とのつながりに気づくきっかけが何度かありました。食や自分の体と向き合うようになったら、弟のこと、命の尊さ、自分が生きている意味を考えるようになったんです。
 そうして自分を掘り下げて出てきた答えが『私は人を愛したかったんだ!』ということでした。私は晋作さんに出逢うまで結婚願望がなく、何かや誰かに縛られるのが嫌で、キャリアウーマンとして世界を旅することを夢見ていました。だから今までは私の考え方に合わないならさようなら、という付き合い方をしてきたんです。でも、晋作さんと過ごしていくうちに『どんなことがあってもこの人には幸せであってほしい』と思うようになっていって、初めて自分以上に大切だと思える人ができました。
 そうした自分の中での様々な問いかけがすべてクリアになった時に『ありがとう』という感謝と共に、涙が溢れてきました。その時から私は『人を愛していく、人に愛を届ける』という生き方に変わりました。晋作さんと出逢って10年、大切な人を愛しいと想いながら過ごす毎日の中で、愛と感謝の循環を大切にしています。」

※リトリートとは:数日の間、日常から離れた環境に身を置き、いつもと違った体験を楽しむこと。旅先の観光地を楽しむというよりは、自分自身に意識を向け、ゆったりとした時間を過ごす。

あいらんど・ばいぶすのチョコレート

「20代の時から私はお酒を浴びるように飲んできて、お肉を食べない生活なんて考えられませんでした。晋作さんと暮らすようになっても最初は食生活は変わりませんでしたが、数年前に体調を崩したのをきっかけに断食に挑戦したんです。そうしたら身体が軽くなるし頭もスッキリするし『食べないのサイコー!』と思ったけれど、実は体は無理をしていたんですよね。」

「断食は少しずつ期間をのばして慣らしていかないと危険なのに、彼女は一気に1ヶ月やってしまったんですよ。
 ある時家に帰ったら玄関の前で成来が倒れていて、彼女の周りには、市販の板チョコを枚以上食べたゴミとビールの空き瓶が転がっていました。無茶な断食からの反動でチョコレートを食べてしまったみたいなんだけど、一気に食べたから血糖値が急上昇して倒れちゃったんだろうね。」

熱を加えていないカカオとオーガニック原料、そして愛で作られた成来さんのローチョコレート。
photo by redphoenix2300

「私はチョコレートが大好きなんですが、この件をきっかけに『身体に負担のないチョコレートを作ろう!』と思って始めたのがラボでも販売しているローチョコレートです。
 能登半島地震が起きた時、私の友人が現地にいました。彼女に『怖いと思ったのと同時に、成来ちゃんのチョコレートが食べたい、他の人にも届けたいと思った』と言われたんです。チョコレートでお腹は満たされないけれど、過酷な環境の中で人々は癒しを求めているんだと知ったら、チョコレートを被災地に届けることで現地の人達の生きる活力になるんじゃないかと思いました。1万人の被災者に自分1人だけでチョコレートを届けることはできないから、チョコレートを作っている全国の人に声をかけたら、バレンタインの一番忙しい時期にも関わらず1400枚のチョコレートが一気に集まったんです。愛のバイブスがつながったことを感じて魂が震えました。
 人間って知らない人同士はつながりにくいけれど、そこに何か愛のきっかけをポン、と投じると昨日まで顔も知らなかった人同士がつながるんですよ。この現象が大好きで、ラボの入り口に書いてある『あいらんど・ばいぶす(ISLAND VIBES)』っていう言葉は、私の生き方を言語化したものなんです。

 コロナ禍に『沖縄に来ないでください』というCMが流れましたが、それを見てすごく悲しくなったんです。沖縄っていろんな国や文化が交わってきたちゃんぷるー文化なのに、分断されてしまった感じがして。『あいらんど(島)ばいぶす(振動)』はその時に浮かんだ言葉で、沖縄も日本も島国ですが、『宇宙から見たら地球も一つの島国と言えるのだから、区別・差別をするんじゃなくて、愛をもって助け合っていこうよ!』というメッセージです。」

自分が幸せの発生源となる

「幸せや豊かさを感じるには、五感を思いっきり開くことが重要なんです。五感フルフルで笑いあって自然の一部として暮らすことを、豊かさだったり幸せだったり愛って呼ぶんじゃないかな。それができるから自然や周りの人たちも愛せるし、そこから愛が広がっていくんだと思う。この感覚を各家庭で持てたら、世界はすっごく幸せになると思っています。私が感じている幸せや愛をチョコレートに込めているから、チョコレートを食べて全身で幸せを感じてほしい。リトリートやお店をやりながら、みなさんが五感を開いて愛を感じるきっかけの一つになったらいいなと思っています。」

酸性に傾きがちな体を整える「アルカリ食」に着目した成来さんの手作りごはん。リトリート中に味わえる。

「自分自身の体験でもそうだし、リトリートで来る人達を見ていると、やっぱり自然の力ってすごいなって思います。五感を開放してくれる力が大きい。
 僕たちは自然との共生を実践していますが、お金のない社会をつくろう!というわけではなく、今の社会経済システムの中でもこんな生き方もできるよということを実証したいんです。人間がいることで、自然と人間との間に循環が生み出されたり、その循環からどういった現象に波及するのかを日々観察しています。その実験として始めたのが焚火です。焚火って人類の最小限の営みじゃないですか。自分が心を穏やかにして焚火をすることで、そこに人が集まるようになって何かが始まって物質的な循環が生まれたり、自分が究極的に穏やかにいることでそれが集まる人に伝わり、穏やかさを持ち帰ってもらって精神的な循環が各地に伝播していったり…。僕が焚火を通して生み出したいことと、成来がチョコレートを通して伝えたいことは一緒で、『自分と周りとの循環から波及する幸せ』なんですよね。」

「沖縄に『ぬちゃーしぃ』という言葉があります。『みんなで助け合って楽しく生きていこう』という意味です。人間も自然もみんなが愛でつながって、それぞれができることを持ち寄って生きていく。沖縄本島の最北端のこのやんばるの地に今、本当にいろんな方が来てくれて、私たちのスタイルを取り入れたり広げてくれたりしています。このお店をあらゆるジャンルの人たちが行き交う愛の交差点にしていきたいです。」

「誰かが火を灯せば、そこに仲間が集まるように、幸せの火を灯せば、それがいつしか大きな愛の循環となるんです。焚火から教えてもらいました」と晋作さん。
photo by ATSUSHI SUGIMOTO

 

Information
HOLISTIC LABO・KUNIGAMI
住所
HOLISTIC LABO・KUNIGAMI 沖縄県国頭村辺土名234
その他
お店の営業日は公式インスタグラムをチェック。

この記事を書いた人

里菌 かこ
「暮らしの発酵通信」ライター/発酵ライフアドバイザーPRO.

EM生活㈱に10年勤め、農業・健康・環境などあらゆる分野での微生物の可能性について全国各地を取材し、EM業界紙に掲載。発酵ライフアドバイザーPRO.の資格を取得し、発酵食品についても広く理解を深める。ライティングだけではなく、ワークショップ講師やイベント企画も務める。

掲載号
この記事は "暮らしの発酵通信" Vol.20 に掲載されています。
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