難しいからおもしろい、不思議だからやめられない藍の魅力:梅原祥子さん
深い藍色の中に少し緑がかった藍の液。真ん中にふわふわと雲のように泡が浮いている。藍染をするための液の状態がいいと、こうした現象が起こるという。「今日はきれいな華が咲いたね」と梅原祥子さんは愛おしそうに樽の中を覗く。 藍染の肌着を販売している㈱トータス(徳島県海部郡)の工房で働いている梅原さんは、車で100日くらい旅をしてここにたどり着いたそうだ。
「藍に呼ばれたのかもしれませんね。草木染は好きでやっていたんだけど、藍染をやり始めたら、全然草木染をやらなくなったかな。藍は生きているから、とても難しい。『もうこの子(液)ダメでしょう。捨てちゃわないと。』と言うと、急に盛り上がって、復活してくるんです。やっぱり気持ちが通じちゃうんですね。(甕の液に)毎日声をかけています。調子 どぉ?って(笑)。がんばって働いてくれた次の日はぐったりしているから、その日は休んでもらったりしています。華が咲いたり、液の状態を見たりすれば、調子がいいかどうかわかりますよ。」 難しいからおもしろい、不思議だからやめられない、という藍の魅力。甕の中の液は藍色というよりも深い緑色。液の中に布を浸し、引き上げてからしばらくすると徐々に藍色に変化していく。酸素と光に触れることで藍の色が現れるのだ。若い藍、古い藍、色んな顔をした樽が並ぶ工房の中は、どこか懐かしいにおいで包まれていた。
ゴマのように小さい藍の種。㈱トータスでは、藍の栽培~藍染めまでを一貫して行っている。全行程の中で最も大変なのは、種の選別なのだそう。
工房で一つ一つ丁寧に染め上げられた作品は、トータスオンラインショップや地元のマルシェで販売されている。
(「暮らしの発酵通信」6号より)
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