ご神木のクバの葉で作る沖縄民具作り体験
沖縄の島々の中でも最北端にある伊平屋島(いへやじま)の静かな集落に佇む、白瓦屋根の琉球古民家のアトリエ「種水土花(しゅみどか)」。敷地内には、自然素材を使った沖縄の民具作品に触れられる「ギャラリー」と手仕事を楽しめる「みんぐの体験施設」があります。
沖縄に古くから伝わる、人間の知恵が生かされた暮らしの道具である民具。ここでは、島の植物であり、ご神木と言われている琉球文化に欠かせないクバの葉や月桃を使用し、昔ながらの民具を現代のスタイルに取り入れやすくしたオリジナル商品の販売や手仕事体験ができます。
カゴや柄杓、鍋敷きなどの暮らしの道具は、現代の生活にも植物がもつぬくもりが心地よく馴染みます。
ギャラリーと体験施設オープンのきっかけ
「種水土花(しゅみどか)」アトリエ・ギャラリー主宰の是枝麻紗美さん
是枝さん:もともとは民具の卸売がメインだったので、自宅と工房がある母屋だけだったんです。コロナで卸先のデパートが閉まってしまったりして、どうにかしなきゃと思い、色んな収入の柱をいくつも作らなければと思っていたのがきっかけで2022年5月にリニューアルオープンしました。家畜小屋を改装して、直販ショップと手仕事を実際に体験できる場所を作ろうと思ったんです。
今までは1人で全部やってたんですけど、今はもう生産が間に合わないので、自分含め主に3人で制作しています。島に嫁いだ島嫁さんが働いてくれています。
1つの作品でも2〜3カ月と時間がかかります。材料となるクバの葉を定期的に山に取りに行って、それをしっかり乾燥させてから作ります。作るときには水で数時間濡らして葉を柔らかくしてから制作に入ります。その後にまた乾燥させて、また編んでと何度も手を加えるものもあり、凄く時間がかかります。
この仕事を10年やってきているんですが、本来、自然素材だとぶどうのツルの方が強いんですが、これは葉っぱなので長く使えるように、そのくらい時間をかけてしっかり編まないとすぐほつれてしまったり、長持ちしないので、結構しっかり作っています。民具ってもともと民の物、そのまま作ってすぐ使える物なんですが、10年使っているものもあります。暮らしを彩ったり、気持ちがわくわく高揚するようなものとして生活に取り入れて欲しいです。
ギャラリーに並ぶ、種水土花のオリジナルの作品
クバの葉や月桃の葉で作られたカゴやアクセサリー、植物をデザインしたTシャツなど展示販売しています。
是枝さん:インテリアとして植物を身近に感じてもらえる隠れヒット商品があります。海で拾ってきたシーガラスをアップサイクルして作ったガーランドです。自分たちで穴を空けて、芭蕉の紐を通して編んで、リングを編んでいる。車に付けたり、インテリアとして飾ったり。サングァーになっているので魔除けになってるんです。
制作しているとゴミが増えちゃうので、カゴ作りで出た葉材を活用してアクセサリーを作っています。月桃の縄を最後にパチッと切るので、その葉材を使って何かできないかと考えて、アクセサリーとして作り始めたんです。旅行で買ったものってそのまま付けたり、旅を思い出せるじゃないですか。そういうものになったらいいよね、これはなんていう植物だろうって思ってもらうエントリーラインになってもらえたらと思っています。
アクセサリーやカゴを「暮らしの発酵ストア沖縄店」でも取り扱っています。
なので、商品のパッケージの裏に植物名を入れてます。思い出とともに植物を身近に取り入れるという感じです。デザイン自体は、3人それぞれ好みが違うのでアクセサリーのデザインに反映しています。人気のあるデザインを選ぶようにして作っているんですが、天然石やアンティークビーズを使って、ちょっとずつデザインを変えてます。材料が自然な物なので、最後の最後は畑に撒いて自然に返しています。
いつになるかわかりませんが、宿もやっていきたいと考えています。ファミリーで来た人もゆっくりできる場所を作って置けたら、うちに来たお客さんにも泊まってもらえるし、暮らしの道具を宿においてそこで実際に使ってもらえたら生活にも取り入れやすいんじゃないかなと。
お店の物はオリジナル商品を販売しているんですが、昔から伝わる民具は世に残していかなきゃいけないから、伝統的なやり方を体験として残していきたいと思ってます。
島時間を楽しむ手仕事体験
「みんぐの体験施設」では、植物でつくる民具を体験できるワークショップを行っています。クバの葉で作るカゴや柄杓、クバと月桃縄のガーランド、月桃縄で編む手吹きガラスの浮き玉など7種類の製作体験ができます。
今回はクバの葉で作るカゴの製作を実際に体験しました。伊平屋島の山から取ってきた大きなクバの葉をしっかり乾燥させ、更に数時間水に入れてふやかしたクバの葉を使用します。まずは是枝さんが実際に作りながら伝統的なクバの葉カゴの作り方をレクチャー。
手だけではなく、膝を使ってカゴの丸みを出すのがポイント。カゴの丸みを出すのが難しいが、是枝さんの長年の経験から的確なアドバイスを受けると不思議とキレイな形に整っていきます。
実際に植物に触れ、会話を楽しみながらモノづくりをすることで、思い出が詰まったひとつとして同じものがない民具ができあがります。沖縄に伝わる伝統的な暮らしの道具を実際に作ることで、島の歴史や人々の暮らしに想いを馳せることができ、特別な島時間を楽しめます。
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