【開催レポ】菌ちゃん先生WSパート①~菌の働きを学ぶ編~
発酵パワーで土も野菜も、人も元気に!
2022年9月10日-11日に、EMウェルネス暮らしの発酵ライフスタイルリゾートにて、長崎県佐世保市を拠点に農薬・化学肥料を使わない自然の力を生かした農業を実践する、菌ちゃん先生こと吉田俊道先生の講座が開催された。(本イベントは暮らしの発酵ライフスタイルリゾートと一般社団法人わたしとちきゅうの共同主催です。)
去年も開催され大好評だった菌ちゃん先生の講座が、今年は新刊本『菌ちゃん野菜作り&元気人間づくり』出版記念講演としてパワーアップしての開催となり、一日目は三部制の座学、二日目は畑での実践講座とボリュームたっぷりの講座となった。
一日目の会場は暮らしの発酵ライフスタイルリゾートの一階ギャラリー。この日は現地とオンラインのハイブリッド方式での開催で、現地参加は満席の40名、オンラインでも50名の参加と大盛況の中で講座がスタート。
菌ちゃんってどんな存在?
菌ちゃん先生は微生物のことを親しみを込めて「菌ちゃん」と呼ぶ。昨今、殺菌や除菌という言葉が当たり前になり、菌(微生物)は悪いもので、いない方が良いというようなイメージを持っている人も多いかもしれない。しかし菌ちゃん先生の説明を聞いていると驚くべき事実が明かされていく。
菌は元気なもの(生きているもの)は食べず、死んだいのちや酸化・腐敗した有機物しか食べないというのだ。菌がいなかったら世界は腐敗したもので溢れてしまうと。
つまり菌というのは死を食べて生を産み出してくれる、この地球の生命循環が続いていくための動力の役割を担う、地球上になくてはならない存在なのだ。ジブリの映画を例に出しながらのわかりやすい説明でストンと腑に落ちていく。
「菌ちゃんは敵じゃない」
まずはこの視点を大事にしながら講座は続いていく。
菌ちゃんふぁーむのお野菜の秘密
菌ちゃんふぁーむでは、新鮮で生命力のある元気なお野菜がたくさん育っている。皆さんの中には、虫食いのあるお野菜は無農薬だから安心!なんて思っている方がいるのではないだろうか。かくいう私も少し前まではそう思っていた。でも実は無農薬で虫食いのある野菜は弱い野菜なのだという。
それに比べ、菌ちゃん野菜づくりでは『農薬を使わないのに虫がこない野菜』ができてしまうのだ。青虫には消化吸収できない成分がたくさんあり、栄養価の高い野菜は青虫は食べない、というか食べられないのだという。しかし、それらの成分は人間にとっては大切で良い成分ばかり。つまり、本当に健康な野菜には虫が来ない。無農薬で虫が来なくなった野菜は強くて元気でファイトケミカルたっぷりの良い野菜の証拠だということだ。
菌ちゃん先生の言葉は理論ではなく実践から導き出されたものなので実に説得力がある。
菌ちゃん野菜づくりの実際
菌ちゃん野菜のポイントは、地球の元気の素である菌とつながっている野菜かどうかということであり、そのためには良い土づくりが一番大事なのだそう。
良い土かどうかは生えている草でわかるという。実際の畑の写真も見せながら良い土とはどういうものか、そして良い土づくりの秘訣は何なのかを惜しみなく教えてくれる。
菌ちゃん野菜の土づくりには大きく分けて2種類の方法がある。それが「生ごみリサイクルでの土づくり」と「身近な自然物を使った土づくり」だ。無農薬かつ無肥料で元気な野菜を作ることができる方法について、新刊本を元に解説が進んでいく。
今回は身近な自然物を使った土づくり、無肥料栽培について詳しく教えてくれた。化学肥料のいらないキーポイントは糸状菌と窒素固定細菌にあるという。糸状菌は空気中の窒素を肥料に変える窒素固定細菌と共生し、野菜の根とつながってその肥料分を野菜に渡すことができるというのだ。
講座中に菌ちゃん先生が繰り返し伝えている「この地球に敵はいない、全ての物は必要だから存在しているんだ」ということを改めて実感する。詳しい農法については後半の実践編でお伝えすることにして、菌ちゃん野菜づくりを応用した発酵型の人間づくりについてのパートへ進もう。
腸内細菌とおなかの中を発酵させるためのキーポイント
腸内にはおよそ1000種類、100兆個にも及ぶ腸内細菌が生息していることが知られている。その種類と数を増やすことが健康につながり、逆に言えば腸内細菌の種類と数が減ってしまうことで様々な疾患にかかりやすくなるということだ。
腸内細菌が減っている原因は多々あるが、一番最初の大きなきっかけは産業革命だという。工場で働く人が増え、土から離れ、土を触らなくなってしまったと。腸内細菌は「3歳までに得た菌が基本となる」というが、最近の研究では、幼少期に土や動物と触れ合って細菌を体内に取り入れた方が、アレルギーや肥満になりにくいこともわかっている。日頃から土に沢山触れて、体の中に菌を取り込んで腸内細菌を整えることの大切さを身をもって知っている菌ちゃん先生は、日々の生活の中で土を触るようにすることの重要性を力説する。
そして、腸内環境を良くしてお腹の中を発酵させるためには菌の種類と数を増やすことが必要であり、「エサをやる」「菌を増やす」「菌を活性化させる成分をとる」ことが大きなポイントになると言う。
つまり、野菜や発酵食品、抗酸化成分の多い食材を食べることを意識してほしいと言うが、大事なのは同じものを5~6ヶ月食べ続けるということだという。腸内細菌が定着するまでにはある程度の時間がかかるためだ。一番良いのは同じ畑から採れた(同じ生産者の)オーガニックの野菜を継続して食べ続けることらしく、お気に入りの農家さんを見つけてみようという気持ちになった。
菌ちゃん野菜づくりの応用した発酵型の人間づくり
菌ちゃん野菜づくりのポイントは「菌だらけの土にすること」と「ミネラル」である。菌ちゃん野菜の土づくりをするような感じで、人間も食べ物で体の土台をしっかりと作っていくことが大事だということを考えると、一番の基本は「おなかを発酵させて微量ミネラルを食べること」だという。
微量ミネラルをとるのに最も適しているのが海のミネラルを取り入れることだそうだ。海の生き物の中で人間に一番ミネラルのバランスが似ていると思われるのが脊椎動物の魚。その魚を丸ごと食べることが出来る煮干しや小魚を食べることが最適だということだ。とある小学校での給食改善で、煮干しを毎日食べることで平均体温が上がった事例の説明や、他にも食改善によって運動成績や学習成績が上がったり、病欠者が劇的に減った事例などの説明を聞いて、参加者の方々は驚いた様子だった。
そしていよいよおなかを発酵させるための具体的な方法についての話へ。
お腹の中が良い発酵型になっているかどうかの一番の目安は「良いウンチが出ているかどうか」だという。良いウンチというのは、キレがよくぷかぷかトイレに浮くウンチで、臭くて沈むウンチは腐敗のサインなので要注意。
そして、良いウンチを出すための食生活の注意点について、食材や調味料の選び方や栄養素、食べ方などを身近なたとえやユーモアを交えながらわかりやすく説明してくれた。
- ・主食はご飯、それもなるべく玄米や分づき米にするといいこと
- ・無添加発酵食品を選ぶこと
- ・旬の野菜を皮ごと芯ごと食べること
- ・よく噛むこと
- ・お腹を「のの字マッサージ」すると良いこと
- ・おなかを冷やさないようにすることが大切ということ等
その理由を踏まえた一つ一つの詳しい解説に、目から鱗だったり、今までなんとなくやっていたことの知識の裏付けになったりした。どれも簡単に出来ることばかりなので早速明日からやってみよう、という気分になる。
そして食の大切さだけではなく、免疫力を減らさないための方法や、こころの健康の大切さまで、本当に健康な体を作るためのコツを時間いっぱいどころか延長してまで情熱たっぷりに伝えてくれる菌ちゃん先生は生命力に溢れ、改めて菌ちゃんパワーを実感しながら長丁場の一日目の講座は終了となった。