長く着るエコ:(有)コンテンポラリー宮城嗣貴さん

眠ること、食べること、空間を整えること。あらゆるシーンで発酵を取り入れ、自然を感じる癒し空間を実現させている「EMウェルネス暮らしの発酵ライフスタイルリゾート」。ホテルの心地よさを日々の暮らしに活かせるヒントをご紹介。

みんなにフェアな服作りがしたい

 暮らしの発酵ライフスタイルリゾートがリニューアルした際にスタッフの制服が一新した。ホテルスタッフと共に制服のリニューアルを手掛けた有限会社コンテンポラリー取締役の宮城嗣貴(つぐたか)さんは、SONUJI(そんうじ)というオーガニックウェアのブランドを持ち、やさしい服作りを手掛けている。

有限会社コンテンポラリー取締役 宮城嗣貴さん

 「SONUJIとは、僕のご先祖様の名前からもらっています。琉球士族のひとつで、孫氏平田家親王王(そんうじ ひらたけ しんのうおう)と言います。ご先祖様に恥じない服作りをしようという想いで付けました。

 ブランドの信条として、良いサイクルでモノ作りがしたいというのがあります。アパレル業界は業態が細分化され過ぎていて、一般消費者にはとても見えにくいし、僕たちでもすべてを把握するのは難しいです。一例ですが、インドの生産者が綿を育て、紡績業者がそれを糸にします。そして、糸を織って生地にする業者がいて、色んな生地を集めて販売する人がいて、僕らがそれを買って型を起こし、縫製工場に頼んで服の形に縫ってもらいます。このような様々な行程を経て初めて服として店頭に並ぶんです。縫うための糸やボタン、布を染める染料などパーツごとに業者が存在し、それが世界中に点在しています。

 生産現場や紡績工場での労働環境が問題として取り沙汰されることがありますが、安い洋服の背景には労働者が虐げられていることもあるから、自分が服作りをするなら関わるすべての人に良い影響を与えられるようになりたいと思っています。フェアトレードとか、善循環な服作りを考えた結果、たどり着いたのがオーガニックコットンでした。」

長く着ることがエコ

 「昔は裁縫する糸まで全てオーガニックコットンを使っていました。でも、綿糸は乾燥するとほつれやすくなってしまいます。強度が必要なところはポリエステルの糸を使った方が良く、長く服を着ることができます。

 今回、ホテルの制服を作る上でスタッフの皆さんとたくさん協議しました。ホテルの皆さんは、『暮らしの発酵というコンセプトに合うように、天然素材を使いたい』という想いが強かったんですが、エコ=天然素材だけではなく、長く着ること自体がエコですからね。綿100%だとアイロンが大変で、制服としての機能性が劣ってしまいます。とはいえ、化学繊維100%はコンセプトと違うし着心地も良くないので、機能性を持たせるためにできるだけ綿を取り入れた制服になりました。」

オーガニック素材でパターンから丁寧に作り上げた服が並ぶ店内 

いかに長く服を着てもらえるか、ということを常に考えている宮城さん。SONUJIでは、服の修繕や回収・リサイクル・リメイクも手掛けている。

 「元々は母がスーツやカジュアル服の直しをしている会社を営んでいて、僕が二代目になります。本土でアパレルの販売員や企画営業、古着屋でのリメイクなどをして経験を積んでいましたが、母が体調を崩したので沖縄に戻ってきました。

 僕が服に還元できることは服を直すことです。ほつれを直したり、汚れたら染め直したり、着られなくなった服はトートバックにしたりと、もったいない精神でモノづくりをしています。親の世代が着ていた古い型のものでも、現代風に直せば再び着られるようになります。

 今まで販売した服の回収もしていて、回収したアイテムはほつれや汚れなどを避け、リメイクをして蘇らせています。服を持ってきてくださった方には一部の服を割引きで購入できるしくみにしているんですが、皆さん大切に着てくださっているようでほとんど回収することがありません。使い捨てやリサイクルが大事なのではなく、モノを大切にする心が一番のエコだと思っているので、お客様にもそれが伝わっているようで嬉しいです。」

楽しい買い物を

 「オーガニックやフェアトレードという言葉を使う時は、農薬によって環境破壊がされているとか、労働者がひどい環境で働かされているなどの問題や被害が表立って取り上げられることが多いです。自分が買い物をする時に『僕はこの服をこの安さでは作れないな』と思う時があり、服の大量生産はいいけれど、その労力をどこで補っているのかと思うと…。こういった現状のニュースを目にはするけれど、自分の店ではなるべくオーガニックやフェアトレードという言葉でお客様に自分が作った服の説明をしないようにしています。

 『服の原料を生産している何万人もの人が農薬の害によって死んでいるんです。だからオーガニック素材の服を選ぶと、人権被害の解決にもつながるし、環境問題の解決の糸口にもなるんですよ。』と言われたら、買い物が楽しくなくなりますよね?服がカッコイイから、着心地が良いから、という理由で買ってもらえるような服作りをするのが大前提だと思っています。モノが良かったらお客様は着てくれますから。お客様にとって良いモノをこれからも作り続けていきます。」

洗うエコ

 生地の素材から選ぶエコもあれば、洗い方のエコもある。暮らしの発酵ライフスタイルリゾートでは、館内着をはじめタオルやリネン類も石けんによる洗濯を実施。肌が弱い人でも安心して着ることができ、クリーニングの独特のニオイもない、と喜ばれている。

 一般的に、ホテルの衣類やリネン類はクリーニング業者に収集され、巨大な洗濯機で洗濯されてホテルに戻ってくる。暮らしの発酵ライフスタイルリゾートでは、オープン当初からクリーニング評者に依頼して他のホテルと混ざらないように分類してもらい、化学合成洗剤を減らして微生物(EM)*の発酵液を用いた洗濯を行ってきた。昨年月のホテルリニューアルに伴い、化学合成洗剤を一切止めて石けん洗濯に切り替えた。

*EMとは?

ランドリールームに常設された無添加シャボン玉洗濯石けん 

そもそも、洗剤は大きく分けて合成洗剤と石けんの2つに分類される。合成洗剤はさらに石油系の界面活性剤を使用したものと、非石油系の界面活性剤を使用したものに分けられている。石油系の合成界面活性剤は肌への刺激や環境への影響が懸念されており、植物性原料を100%使用した合成洗剤も多い。

 石けんの主原料は天然油脂。「石けんには界面活性剤が入っていなら安全」と勘違いされやすいけれど、石けん自体も界面活性機能(水と油を混ぜる機能)はあり、それによって汚れを落している。石けんは肌への刺激がほとんどなく、天然の保湿成分が含まれているので衣類もふんわり仕上がり、環境への負荷も小さいため、ナチュラルな生活の必需品と言える。

 暮らしの発酵ライフスタイルリゾート2階のランドリーコーナーでは、無料で使える洗濯機と乾燥機が設置され、無添加洗濯石けんも利用できる。石けん洗濯の心地よさを体験してみては?

24時間利用可能なランドリールーム。帰宅してから洗濯物をまとめて洗わなくていいので、旅行者には嬉しいサービス。


2021年12月取材「暮らしの発酵通信」15号掲載

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この記事を書いた人

里菌 かこ
「暮らしの発酵通信」ライター/発酵ライフアドバイザーPRO.

微生物関連会社に10年務め、農業・健康・環境などあらゆる分野での微生物の可能性について取材し、業界紙に掲載。発酵ライフアドバイザーPRO.の資格を取得し、発酵食品についても広く知識を深める。ライティングだけではなく、ワークショップ講師やイベント企画も務める文武両道の発酵ライター。

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